
プラハ滞在の最終日、夕方から最後の散歩に出かけた。ヴァーツラフ広場に繋がる通りには、うっすらと夕暮れが迫ってきた。
玄関や窓にもきめ細かな装飾が施された、市民会館そばのホテル・パリーシュ。ネオゴシック様式のビルは、見事に青く澄み切った空を背景に、照明で黄金色に染まる建物群とともにプラハの夜を華やかに仕上げて行く。
ヴァーツラフ広場の裏に来た。ちょうどティーン教会の尖塔と同じ高さに三日月が光っている。チェコ人たちは、こうした光景を一つ一つ自らの心の中に刻んで成長してきたのだろう。

広場中央にはヤンフス像が、闇から浮かび上がるかのように立ち上がる。その姿を、後方の聖ミクラーシュ教会の塔が優しく見守っている。

前方には旧市庁舎の塔がそびえる。ちょうど薄雲がたなびき、その闇をバックにした月が、高く高く浮かぶ。

カレル橋側からの旧市街広場入口から、市庁舎、ティーン教会の双方が1枚の写真に収まるポイントで、シャッターを押す。
いつまでもこの風景を見つめていたい気持ちが高じて、出店のホットワインを買い求め、もう一度広場をぶらりと歩いた。
「神秘。他の言葉で言い表すとしても、思うのはプラハという言葉だけである。暗くすい星のように物悲し気な都市。その美しさは燃え上がる炎を思わせる」。
アンジェロ・リベリーノが「廃都プラハ」でこのように表現した。そんなプラハが今、ここにある。

最後にパリ通りの夜景に行き着いた。
聖ミクラーシュ教会から北に、パリ通りがチェコ橋に繋がって行く。この通りは以前ユダヤ人たちの住民地区を塀で囲んだゲットーで、スラム化した一角だった。
それを全く新しい近代的な街にしようと、19世紀半ばに都市改造の着手した。約600軒あった古く小さな建物を、高さをそろえた83軒のビルに整理、アールヌーヴォー様式を採用して魅力的な通りに一新させた。
それぞれの壁面にも意匠を凝らした街並みは。夜の街灯に照らされて、目の覚めるような新市街としてプラハの中心部を華やかに彩っている。
以上で「中欧三都物語」は終了し、次回から新しいシリーズを始めます。